英語を公用語にする企業

ユニクロ楽天など、この不況の中で成長を続けている企業が相次いで「社内公用語を英語にする」と宣言している。また、パナソニックなど採用の半数を外国人にする等、日本企業のグローバル化が進んでいる。
これら企業の狙いは明らかで、脱ガラパゴスを目指して企業の更なる成長市場を海外シフトすること。先進国と呼ばれている日本の経済はもはや成長せず、高齢化が進み、というのは誰もが知っている事。
企業トップがいち早く海外進出を宣言し、実行に移すと言う点では、その是非はおいといて、わかりやすい。

これら企業に勤める従業員はどうなんだろうな。

頭に浮かぶのは、新春バラエティ「タモリさんまの英語禁止ゴルフ」。あれを見ていると解るのが、日本語の中には無数の英単語がすでに反乱しているという事実。つまり「英語を使ってはならない」と言われただけでコミュニケーションにすごい負荷がかかるというのは非常に興味深い。これら英語をすべて使っていいと言われたら楽になるか、というと、これが全然そうではない。英語としては通用しない英単語を徹底的に覚え直さなければならないのである。いくつか例を挙げてみよう。
ギヤ  Transmission
ハンドル Steering, Steering Wheel
フロントガラス  Windshield
ボンネット  Engine Hood
バック  Reverse
ラクション Horn
ウィンカー  Turn Signal
アクセル  Gas Pedal
バックミラー  Rearview Mirror
キーホルダー  Key Chain
ガソリンスタンド Gas Station
パンク Flat Tire
まだまだあるぞ。
いかがだろう、カタカナで書いた言葉は相手には通じない。
車関係だけでもうあなたの英語は全滅って感じじゃないだろうか。

日常生活でも
ハイビジョン HD(High Definition)
クレーム  Complain
チャック  Zipper
マンション Condo, Condominium
アンケート Survey
青信号  Green Light(青ではなくミドリ)
電子レンジ Microwave oven
バイキング Buffet(バフェと発音。バイキングは海賊のこと)
ベテラン  Expert(ベテランとはすでに退役した元軍人のこと)
その他、サラリーマンとかOLとか、「は?」という存在しない言葉である。

発音も違う。
McDonald マクダーナルド(マクを小さく、アクセントはダ)
Hot Dog  ハッダッ(アクセントはハ)
こんなのは有名なので皆さんご存知と思うが。
oasis オーエィシス
Fax  フャーックス(ファックスと普通に言うと、ファックと言ってるとゼッタイ間違われる)
virus ヴァイルス
Vitamin  ヴァイタミン
matrix メイトリックス
これはもうきりがない。発音が違うと100万回繰り返しても通じない。

概念も違う。
バツ三角のようなカテゴリー分けは解ってもらえない。Xはあくまでもエックスであり、ダメという意味はないので、プレゼンで◯X△を使ってダメ。
こういう場合は色分けがよい。◯は緑、三角は黄色、Xは赤。
ただしモノクロ印刷されると訳が分からなくなる。
オイデオイデをするときには手のひらを上に向けないと行けない。日本人がよく使う、手のひらを下に向けたおいでオイデオイデは「あっち行け」に見える。

気をつけておいた方がいいのが "Say again please"
相手の声が小さい、電話が聞き取りにくい時はこれでいい。
相手が何を言っているのか理解できないときにこれを使うと、まずい。相手は同じ会話を繰り返すがこっちは何を言っているのか解らないので、何度聞いたってわからないものはわからない。で、相手が切れる。
早口でわからないのであれば "Would you speak slowly for me please"(ゆっくり喋ってくれ)。意味が分からなければ "Would you rephrase for me please"(わからないので違う言い回しにしてくれ)。

日常会話だけでこれだけハードルが高いのに、仕事を英語化するっていうのはすごいことである。
私は一通り英語ができるが、ゼッタイに手を付けないのが「契約書」。契約書の英語を見た事がある方は解ると思うが、あれは英語ではない。アメリカにいた時の同僚ですら「This is not an English I know」という、専門用語と特殊な言い回しの塊である。ひとつ間違えば下手すれば儲けが吹っ飛んだり、相手に100%非がある訴訟で負けたりする。どうするんだろうな、と人ごとながら心配してしまう。

私の働く会社は外資が注入された日米合弁企業であるが、いまのところこのような英語化の兆しはない。
これからもないと思う。
うちの経営者は頭がいいので、こんなことしたら会社が即心肺停止状態に陥る事をよーくわかってらっしゃる。